★シュミレーション・ビラ撒きの日B
★風薫る街?
身軽になり、足を確保したので気分は相当楽になった。街を眺める余裕も出てくる。駅前以外は結局田舎、海が近いのでうっすらと潮の香りもする。工業地帯だけでなく漁港もあるらしく、海草のこびり付いた魚網やらブイやらが、でーんと空き地に置いてあったりする。
もしかしたら潮の香りの元はこれかな?なんて思うと案の定その通り。近づくにつれて生臭い香りが強烈に香ってくる。風に乗った臭いは風情があるが、近づくとたまらない。周囲に住んでいる人はこんな香りを毎日かいでいるのだろうか?私はちょっと勘弁してほしい。
★時は過ぎ去る為だけにあるのか?
港まで来てみたものの、ん〜本当になんにもないね・・・自転車で5分走ってなにもないっていうのは半径1kmエリアには物件がないと言うこと。そんなことは地図を見た時点で分かるし、なによりその場に立てば、実際になーんにも無いので悲しさのあまり、涙が出てきそうになる。っと言い過ぎかそれは・・・。
あまりに何もないので、ちょっと休んで気持ちの切り替えでもしましょうか。つまり自動販売機を見つけてジュースとタバコで一休止ということ。夏の間は500mlペットボトルのお茶(1日2L位飲むのでジュースだと体が変調をきたす)をスボンのポケットに常備していたが、この季節になると大丈夫。適当に見つけた自販機前で小休止だ。
ビラ撒き人は休憩場所を選ばない、当然自動販売機付近の路上にドーンと座り込んで地図を広げ、タバコをふかす。今時の高校生も、地べたに座っておるようだが、そんなモン目じゃないくらい、所かまわず座るのが我々なのだ。
人の視線が気になるのは最初のうちだけで、そのうち全然気にならなくなる。というよりも「一般人とは世界が違うんだぜ、オリャ〜」という意識が芽生えてくるのが不思議なところ。視線の高さが人の心理に関わる度合いはひっじょぉ〜に高いのよ。地べた座り高校生も深層心理ではアウトロー気取りなんでしょうね。みなさんわかってあげましょう^^
一服して、道にねっころがると、とスカーンと抜けるようなお空が広がっている。聞こえてくるのは遠くの工場の音だけ、しかも海に音が吸い込まれてしまうのか、微かに聞こえてくるレベル。ん〜寝てしまいそうだ・・・。しばらくそうしていると、気分の切り替えが完了する。すなはち、あきらめの境地ってやつですな。撒き切るのを諦めて、エリアをひたすら潰していくことにした。
「辛いときほど気楽にお仕事」が私のモットー。
さー港を散策することから始めよう。観光がてら、ぜったに物件があり得ない港湾エリアではあったが風に乗って自転車で流してみた。
★犬との遭遇
回っていくうちにアパート発見、早速撒きに入りまぁ〜すっと。おや犬が居るよ?、面構えは極限まで極悪で、かつ最低。飼い主の顔も相当なモンだろう。当然私を見るなりうーうー唸っている、まあこんなコトはよくあることで気にせずGo!Go!である。つながれた犬など、去勢されたAV男優みたいなモンである。敷地に入りドンドン建物へ近づいていくと何か変だ。ん〜??首輪はついているよなぁ〜、鎖もついているしぃ〜、鎖はちゃんと柱に繋がっているぞぉ〜、でもね・・・
鎖が異常ぉ〜に長いんですけど・・・・・・・
これは一体どうしたことだねワトソン君!
ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!
どひゃぁ〜全然鎖の意味無いじゃん!入り口付近まで追いかけられる、このときばかりは本気でダッシュ、傘もないのでブロックもできず。いきなり走ったので動悸が激しい、心臓にも体にも悪すぎる。郵便局と宅配便と新聞屋のお兄ちゃんはどうやって入っていくのだろう?やっぱり最初は逃げるのかな?などと考えながら速攻でチャリンコをこぎ始める。
★遂行状況報告
そんなこんなで日も落ち始めた頃、あまりに物件がないので班長に電話を入れる。今のところまでの配布枚数を報告しなければならないのだが、6時時点で600枚・・・あまりに少なすぎる。
正直言ってこんなに減らないのは初めてだ。どんなに薄い地域であっても1日歩けば1500枚は撒ける。夕方の段階で最低1000枚ってのが普通だ。ん〜迷いどころである、このまま正直に報告すれば、いくら信用が厚くとも変な詮索をされかねない、仮に納得してもらえたとしても、班長の心には「こいつ、つらくて手を抜いたか?」なんて思いが残るかもしれない。
ここは一つお互いのためにも、ちょいと誇張して報告しておこう。念のために言っておくが嘘の報告をしたのは後にも先にも今回だけ。班長にいらぬ気苦労をさせぬための気配りだと思ってもらえればいい。
「あー ども○○です、無茶苦茶きついですね、どうしましょうか?」
「そーか、今どれくらい?」
「残900です」
(残り900枚の意味、今日は2000枚持ち出しなので、1100枚撒いたことになる。つまり実際より500増しの報告ってコト)
「かなり残っているね、じゃぁ駅の反対側行ってないよね?そっち回っていいから頑張ってみて」
「分かりました、それじゃ」
こんな感じで作戦変更である、自転車を走らせて諦め半分で駅の反対側に向かう。当然ながら駅の両側で繁栄の度合いがじぇんじぇん違うなんてことはそうそう無いので、こっちが寂れていれば、当然あっちもアレな訳であるから、期待度は0である。
★予感的中
やはりというか全然なし。なんと言っても、駅のド真ん前にアパートがあること自体が間違っている!おい、店はどこだ、店!駅の周りに人が住んでどうするんだ、まったく・・・。よって一回りした結果アパートは駅の周辺のみにちらほらと、あとは皆無という事実だけが残ったのであった・・・・おしまい。
とまぁ、ここで撒きを終わりにしちゃうと良心がとがめるので、あとはひたすら距離稼ぎである、つまりそれは夜のサイクリング。ドンドン走り、ドンドン地図を塗りつぶしていく。あまりにも配布エリアが広くなると、
「おめぇ、どうやったらこんなに回れるんだよ!」
と疑われかねないのね100%物件の無かった地域は塗らないコトにする。そーすると殆ど塗れなくなっちゃうんだけどね・・・。初心者は回っていない地域を塗りつぶし「てめえぇ、嘘つきやがって、コノヤロー」と怒られるが、上級者になると回った地域をあえて回らなかったコトにする配慮も必要となるのである。
つづく